この丸急須は
把手を後手(うしろで、と読む。ごてにまわったわけではない)に廻した。さてこのセンテンスに「把手」は必要か。もちろん急須に把手は必要なんだけれど。
後手に廻すにはそれなりのわけがある。第一に、利き手のヒエラルキーがない。たとえば鋏に困ったりする。制度のようなものに抵抗して小さな穴に親指以外の指をぎゅっと押し込めたりして。痛い。改札の切符の投入口だって手をわざわざ交叉させる。体を捻る理由がわからない。二、三歩違和感が残る。寄り道してしまったが、後手に廻すわけ、第二に、横手の急須とちがって収納にスペースをとらない。第三は、スタイルをみればわかってもらえそうだ。緑茶、紅茶にかかわらずなかなか重宝しそうである。ここに堅苦しい制度はない。だからだろうかこの急須、胸を張っているようにもみえてくる。「あたしのこと、『ポット』と呼んでくださってもけっこうですわ」
茶漉しは二種類ご用意した。茶葉にもよるが、細かい穴(極細)と、それよりちょっと大きな穴(並細)のもの。ピアニシモと、メゾピアノ、のちがいだろうか。前者は、茶葉を留めるが漉し易い。後者は、湯呑みに茶柱をこしらえるぐらいの粗目である。紅茶、ウーロン茶にはこちらがよい。本体の造りは、中国の茶器に倣って「被せ蓋」にした。「蓋摺り」という製法で密に合わせて湯漏れもない。さあ、撫ぜて、撫ぜて、魔法をかけて、いただこう。生活に味わいを注ぎますよ。
商品名 丸急須 後手
素材 烏泥
製造 高資陶苑(愛知県常滑市)
デザイン 猿山修
制作 東屋
寸法 幅147mm × 径88mm × 高84mm
容量 255ml
重量 約137g
仕様 二種類の茶漉し有り(極細、並細)
※極細は製造休止しております。
価格 各7,150円
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