この原稿用紙は
鉛筆のノリがよく、インクの吸い込みもいい。筆記用具を選ばない紙である。罫組による活版印刷の表罫(いわゆる細い線)はあえてルビ欄をなくし、紙面の内に1:√2の格子を入れ子にしたデザインである。(1:√2とは、たとえばこの原稿用紙のようなA4、あるいはB5などの紙の種類の比率と同等である。)工夫を凝らせば文字原稿のみならず、一マスを四つないし九つほど囲んで配列して、冊子作りのページネーションや台割りの見取り図にも活躍しそうである。
さて、肉筆で文字をマス目に埋めていく行為は私たちにどんな効用をもたらしてくれるのか。センテンスが紡がれ、そのコンティニュイティでパラグラフが築かれ、文章はどこまでも線状に生成されてゆく。ある作家は、書き出しを傷に譬えて「その傷が治ってゆく過程を眺めていくこと」と説くが、その経過観察の眼差しこそ、書き綴る言葉の躍動や愚かさに目を白黒させながらも推敲を重ね、いつかどこかで「原点」=マザーに出会えることを願っているのかもしれない。用紙が何枚あっても足りない気もするけれど。
ビミョーなズレを生かした活版独特の温かみある罫線に寄り添いながら、丁寧であれ、走り書きであれ、写しや清書であれ、そのときどきの気分を肉筆で綴ってみる。母語にはうってつけの用紙なのである。
商品名 1:√2原稿用紙
素材 紙/サテン金藤
製造 弘陽(東京都中央区)
デザイン 山口信博
制作 東屋
寸法 A4(210 × 297mm)
仕様 表罫を使った罫組による活版印刷
400字詰(20字 × 20行)× 50枚
天綴じ(クロス巻き/赤、青、黄の三種類)
価格 各770円
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