
生活の基盤 其の一
「はらう、ということ」
埃をはらうということは、敬意をはらうことである。と言ったのはだれだったか。
例えば、書き物をして、鉛筆の消しかすをささっ、とはらっているのは、やっと書きあがった安堵の吐息をおとしながら、その机の上で思考を重ねることができたことへのせめてもの敬意をはらうことである。あるいは、食事をしたあとの、パン屑をしゃしゃしゃっ、とはらうのもまた、楽しく過ごせた食卓への敬意をはらっていることになるのだろう。
わたしたちの生活は、大なり小なり、自らが選んだ場所、いいや、使わせてもらっているその地に、なにかしらいろんなもの、ことがら、を堆積させたその上に立っていて、それがあたかも自分の背の伸びたふうに装っているのだけれども、あるときその山を降りねばならないときには、よけいなものはいっさい取り除いて立ち去るべきだし、それがその地への敬意をはらうということになる。だとすれば、振り返ってその目が見るものは、もはや目には見えない架空を見上げるようなものであって、ただ途方に暮れながらなんとこの身の小さきことかと知るよすがとなるようだ。
さて、そこがまさしく、生活の基盤である。その盤上はことあるごと澄み切っていたほうがたいへん好ましい。またそれを、わたしたちは「大切」と言う。
このお手掃きは、
小さなほうきとちり取りのセットである。ほうきは、パキンと名のる植物繊維、別名メキシカンファイバーでできている。パキン製のブラシ類は、その腰の強さから優れたブラッシング効果があるとされ、このほうきもまた、潔い掃き心地である。ちり取りは、ちいさな塵も埃も取り損なうことのないよう、秋田杉の柾目で隙間なくさしあわせてこしらえた、江戸指物である。
ちり取りの手許に開けたまあるい穴にほうきのひもを通せば、壁に引っ掛けることもできるので、手の届くところにぜひ、このコンビを待機させておいていただきたい。ますます重宝するはずである。
商品名 お手掃き
素材 ちり取り/杉、箒/パキン
製造 ちり取り/井上木芸(東京都荒川区)
箒/高田耕造商店(和歌山県海南市)
/昇苑くみひも(京都府宇治市)
制作 東屋
寸法 ちり取り/幅127mm × 奥行114mm × 高33mm
箒/幅90mm × 長125mm × 厚18mm
価格 13,200円
※ 箒の紐が新たな仕様になりました。(写真と異なります)
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