画廊
少しだけ時間が余ったついでに、その扉を開けてみた。通りに面した大きなガラス窓の向こうに見えた一枚が気にかかって、小走りで渡るとそのまま入った。がらんとした空間には数点ほどかかっていて、どれも風景画だった。気にかかった絵はほかの絵とはちがってずいぶんと大きかった。それは見知らぬ町の遠景だった。丘の上に立ったようにひろがって見えた。灰色の空が画面の上半分を占めていて、その下にビルがひしめきあいながら消失点へと向かっていく。どのビルも素地は白く、窓はすべてが閉じられているように黒く塗り潰されており、そのくせ刷毛目が油の光沢で光っていた。そのひとつに引き寄せられた。ほかとなんら区別はなく、数多ある四角い窓はせめぎあうように羅列され、ただ塗りこめられているだけなのに、なぜかそのひとつがこの世の中心のように私を引き寄せてやまなかった。誰かがそこにいて、こちらを見ているのかもしれなかった。私は息を呑んだ。私は振り向いた。
この汲出しは
文祥シリーズのひとつである。すでに紹介した「果物鉢」を参考にしていただければ、当窯のこしらえる器の機微をすこしは分かってもらえるとおもう。本分を尽くすこと、それだけでこしらえた。それを素朴と呼ぼうが一向にかまわない。茶を汲もうが、酒を酌み交わそうが、想像が口を開く、汲み出す、口にする。
商品名 汲出し 文祥
素材 泉山陶石、白川釉石、土灰
製造 文祥窯(佐賀県伊万里市)
デザイン 猿山修
制作 東屋
寸法 径88 × 高56mm
容量 185ml
価格 3,300円
※ 入荷未定
<< 戻る