
身の置きかた
牛乳を「ミルク」と呼ぶとなんかちがうし、スパゲッティを「パスタ」と呼んでもわたしのとはちがう。「シェア」だとか「ソーシャル」だとかいいかげん聞き飽きたし、そのくせ「マスク」には慣れてしまった。「エビデンス」とか、そんなもの求められてもわたしにはなんにもないし、もうどうしていいかわからない。わたされた紐をただつないでつないでいくことを<日々>と名付けてしまったわたし。というか、いったいだれからそれはわたされているというんだろう。球体のようにからだをくるんで眠りたいだけ。答えのない日だから「答えられない」とだけ応えつづける(応答セヨ、ダレカ応答セヨ)それがわたし。
むかし飲んだ牛乳がなつかしい。大瓶が二本、玄関に毎朝配達された。注ぎ口に輪ゴムでとめた紫いろの半透明、うすい四角いビニールをほどいて、紙のキャップをめくったらいきおいコップに注ぐのだ。まっ白い液体がごくごくからだを満たし、それから、毎日という日がこくこくと色つきでちがっていった。
空っぽのコップよ、きみのようにすくっと立っては洗われて、逆立ちしては実直に渇いてさっぱりしたいのだよ、わたしは。
このコップは
気分がいい。粛々と吹いて吹いてこしらえた。気取らない様子は用途なんて考えさせない。気軽に声でもかけるみたいに手にしてみたいな。満たされるわたしの目の前にいつもいるコップよ、コップ。
商品名 コップ
素材 ガラス
製造 晴耕社ガラス工房(京都府京丹波町)
デザイン 猿山修
制作 東屋
寸法 径81 × 高98mm
容量 310ml
価格 3,850円
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